事例

ブランドの哲学を製品に込めてアパレルビジネスの再構築を目指す

合同会社スレッドルーツ

アパレルブランド「MITTAN」の運営

https://mittan.asia/

代表 三谷 武 様
生産管理  伊東 敬史 様

目的

  • 生産アイテム数の増加や工場減少に伴い、新しい取引先の開拓が必要
  • sitateru CLOUDを利用して新規取引先とスムーズな進行管理したい

結果

  • 自力で探すことが難しい、自社のニーズに合った技術レベルの高い国内の縫製工場など新たな取引先が増えた
  • sitateru CLOUDの利用により、新規取引先の工場とスムーズに業務が進められた

利用サービス

sitateru CLOUD導入の目的は、生産管理のデジタル化を通じて自社のニーズに合った縫製工場と新規取引をすること

時代に抗うファッションブランド(代表 三谷 武 様)

京都に本社を構える「合同会社スレッドルーツ」は、今年(2023年)で創業10周年を迎えます。

私たちのブランド『MITTAN(ミッタン)』は、設立当初より「ファストファッション」に対する問題意識を持ち、同じアパレル業としてその課題をどのように解決していき、また社会に問いかけていくべきなのかを模索しながら運営を行ってきました。

その大きなテーマに向き合い解決していくためには、製品や事業のあり方を根本から見直し、デザインだけではなくビジネススキームまで含めた新たな挑戦が必要であると考えています。

時間が経っても美しい道具がブランドコンセプトを象徴

弊社WEBサイトのTOPページには、他ブランドのサイトに散見されるようなモデルが製品を着こなしたイメージビジュアルは掲載していません。

そこには「砧(きぬた)」という道具の写真があるだけなので、「本当にファッションブランドのサイトなの?」と一瞬戸惑う方も多いようです。

古くから衣服製造に使われてきた「砧」という道具には、時代を超えた美しさや力強さがあると思っています。

まさに私たちの洋服を通して「生活」を見つめ直して欲しいというブランドコンセプトや企業理念を、この写真が象徴していると考えています。

歴史の延長線上にある衣服や生地を再構築して「現代の民族衣装」として提案

10年ほどアパレル会社に勤務していた時に、業界に対する問題を意識するようになりました。

それは「ファストファッション」という言葉に象徴されるような、洋服を大量に生産し大量に消費している、見方によってはもうこれ以上洋服を作る必要がない状況に対して、アパレル業界に身を置く人間として疑問や危機感を感じました。

これから私がアパレルの仕事を生業とするのであれば、「今、これがおしゃれです。これを消費してください」というような時代に迎合した無機質な洋服をつくるのではなく、「使える道具のような服」を作りたいと考えるようになりました。

それが「MITTAN」の基本的なコンセプトであり、ブランドデザインの軸である「現代の民族衣装」の考え方のベースとなっています。

ファストファッションに対する問題提起をビジネスに反映させる「下取り企画」

企業としてブランドを運営するためには、ビジネスとして活動し、それを成立させることが必要です。

その「使える道具のような服」という考え方を貫き、事業を成立させることができないかと模索した結果、新しい経済活動に対する考え方のひとつとして「自社製品の現金買取り」に取り組んでいます。

これは、「私たちの製品であれば、いつでも、どんな状態であっても定価の20%で買取りさせていただき、その製品は適切な『修繕』を行い『再生』させ、再び『流通』させます」というかなり挑戦的な試みです。

この取り組みは、リサイクルやSDGsの観点からも注目され、複数のメディア取材も受けましたが、この挑戦が一過性のものではなく、ビジネスとして継続的に成立することを証明したいと考えています。

「積極的なトレーサビリティ」により製品の背景を伝える意味

製品にはすべてQRコードが付いており、情報を読み取ることでそのアイテムの原材料や縫製・加工などの背景工場が確認できるようにしています。

現代では物があふれ、自分が着ているものを「誰が」「どんな素材を使い」「どこで作った」のかわからないという状況が当たり前になっています。個人的には、それが簡単に捨てられてしまう原因のひとつでないかと考えています。

少し極端な話ですが、今自分が着ている洋服が身近な人や親が作ったものであれば、簡単には捨てないのではないかということです。

もちろん、その「捨てる」という行為にもグラデーションがあるので一概には言えませんが、手作りであるという情報が認識された時点で思い入れが生まれ、簡単には「捨てられない物、長く使いたい物」になるのではないかと考えています。

そのような想いから、製品の情報をひとつひとつしっかりと伝える努力をしていかなければならないと思っています。

弊社では一般的な企業にみられる「規則を守るため」の情報公開とは一線を画し、商品に愛着を持ってもらい作り手の私たちと距離を縮めるための「積極的なトレーサビリティ」として取り組んでいます。

ブランドを理解してくれる協力会社と長くお付き合いしたい(生産管理 伊東 敬史 様)

私は8年ほどアパレル業界で働いた後、「スレッドルーツ」のコンセプトや長く着てもらうための「修繕」や「下取り」などの取り組みに共鳴して、2年ほど前に入社しました。現在は「生産管理」を担当しています。

弊社で働くようになって感じるのは、根本的に「ものづくり」の考え方が他社と全く違うことです。とくに、前職と比較すると職人との向き合い方や関係性が大きく変わりました。

以前は「発注側」と「請負い側」の立場が明確化されており、その責任の範囲内でビジネスライクに制作が進んでいました。しかし現在では、「MITTAN」が理想とする製品に向き合い、一緒になって「ものづくり」していく一体感を感じています。

縫製や加工の現場には必ず足を運び、弊社のものづくりに対する考え方などをお話させていただき、ブランドや工場という「垣根」を感じないフラットな関係性のなかで、長いお付き合いを続けられるように心がけています。

技術力の高い国内縫製工場の減少に対する危機感がsitateru CLOUD導入の背景

会社設立から10年という節目を迎え、お客様が増えると同時にアイテム数も増えてきました。また現在お付き合いしている工場のキャパシティの限界も出てきました。

さらに国内の縫製工場が減少している状況に対しても大きな危機感を抱いており、私たちの作りたい服に対して共感し、かつ確かな技術力で支えてもらえる工場を探してパイプを作ることが急務であると考えました。

以前より、シタテルはクラウドシステムの提供だけではなく、多くの国内縫製工場とネットワークを持っていることを認識していたので、私たちに合った工場の紹介を依頼するために「sitateru CLOUD」の利用を開始しました。

シタテルが紹介する工場とマッチング率が高い理由は、担当者にアパレルの知見があるから

シタテルから紹介してもらい取引を始めた縫製工場は、技術・品質ともにレベルが高く大変満足しています。継続的な取引になる工場も多く、どれも自分たちだけの力では絶対に探せない工場ばかりでした。

私たちが希望している工場とマッチする確率が高いのは、ブランドの考え方や求める技術についてシタテルの担当者が理解し、その上で最適な工場を紹介してもらえるからです。

弊社のアイテムの多くは、「縫製後の製品染め」の手法で制作されています。そのため、きれいに染めるために「綿糸」を使って縫製をお願いするのですが、化学繊維の糸より切れやすく縫製には時間もかかり、高い技術が必要となります。

このような弊社ならではのこだわった要望に対しても、内容を理解して最適な工場を紹介していただけるシタテルは、生産管理のシステムを提供しているだけでなく、重要なパートナーだと考えています。

今では紹介してもらった工場から「『MITTAN』の製品を縫うことにやりがいを感じる」と言ってくださってる工場も出てきており、本当にうれしく思っています。

シタテルクラウド利用による予期していなかった「メリット」

取引が成立した工場においては、sitateru CLOUDを利用して生産の進行管理を行っています。

シタテルから紹介された工場は、すでにsitateru CLOUDを使いこなしているため、すぐに依頼ができ、スムーズな進行ができています。基本的な仕様の伝達・確認はクラウド内で完了しますが、伝わりにくいニュアンスやこだわりの部分においては、電話や対面でのコミュニケーションをとっています。

クラウドを利用するようになって、実は導入前には予期していなかった効果がありました。それは、社内のコミュニケーションがよりスムーズになったことです。

企画やデザイン部門も、クラウド上で進捗状況をリアルタイムに確認できるため、企画意図やデザインのこだわりなどを、サンプルに反映しやすくなりました。

それは今までなかった制作フローの大きな変化で、製品のクオリティをあげていくために、生産管理情報が共有できるsitateru CLOUDの大きなメリットだと考えます。

既存の取引先においては、従来の方法で進行管理を行っています。今の段階では、私たちだけが効率化するだけではなく、工場にとってやりやすい方法で進める方が良いと判断をしているからです。

自分たちが納得できる「ものづくり」をするために(代表 三谷 武 様)

2023年11月に本社にショールームをオープンする予定です。

そこは単なる「売り場」ではなく、私たちの「考え方」や「取り組み」への理解が深まるような「MITTAN」らしい場所にしたいと考えています。

また、現在取引のある卸業者や店舗だけではなく、エンドユーザーと直接対面して意見を聞くこともできる場所になることを期待をしています。

服が大量に流通し早いサイクルで消費されている状況の中で、私たちは新たに服を生産するという仕事をしています。このような現状だからこそ、服と人との関係性を長く続けていきたいという想いを強く持っています。服作りに対して自分たちが納得できる「意味」を見出しながら、今後も取り組んでいきたいと思っています。

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