事例

瀬戸内海リゾートホテルのリブランディングにオリジナルユニフォームが果たした役割

マリッサリゾート サザンセト周防大島

・マリッサリゾート サザンセト周防大島


「世界有数の多島美『瀬戸内』で心を癒す美しく輝く上質な休日を」をコンセプトにした滞在型リゾートホテル。

開業30周年を機に建物だけではなくコンセプトを含めた大幅なリブランディングに取り組み、今年(2023年)7月にリニューアルオープン

https://www.marissa-resort.jp



・東和観光開発株式会社


大手ゼネコン戸田建設グループの一員として、ホテル、商業施設等の運営を通じて、お客様へ付加価値の高いサービスを提供し、持続可能な社会の実現に寄与する


【運営施設】

・マリッサリゾート サザンセト周防大島(山口県)

・リヴェルト京都鴨川(京都府)

・TSUTAYA BOOKSTORE 常総インターチェンジ(茨城県)

総支配人 野村 歩  様
マーケティングコミュニケーションズ 野村 真梨子  様

目的

  • リブランディングによる新しいコンセプトに沿ったオリジナルユニフォームを制作する
  • ユニフォーム制作プロセスを、リブランディングにおけるスタッフ意識改革施策のひとつとしたい

結果

  • 新しいユニフォームを通じて顧客だけではなくスタッフにも、目指すホテルの姿やサービスを伝えることができた
  • スタッフがユニフォーム制作に参画することで、個人の意識を高めホテルブランドの考え方について共有できた

利用サービス

フォルム、カラーリング、質感全てにおいて新しいブランドにマッチするだけではなく、顧客視点にも配慮されたバランスのいいデザイン

コンセプトから建物まですべてをリニューアル

山口県周防大島は、歴史的にも古くからハワイ州カウアイ郡と姉妹島提携しており、長い間「瀬戸内海のハワイ」として認知されてきました。

そのような背景から当ホテルも「ハワイ色」を全面に出して、主にファミリー層をターゲットとしたブランド・営業展開をしてきました。

また開業以来30年間、大きなリノベーションもしておらず、建物の老朽化も進んでいました。

そこで数年前より、建物や設備のハード面だけではなく「コンセプト」も含めた大掛かりなリニューアルが検討され、昨年(2022年11月)に一度閉館して、今年(2023年)7月のグランドオープンに向けて改修工事とリブランディングを進めてきました。

リブランディングのコンセプトは「マリッサリトリート」

30年前と比べて時代とともにハワイに対するイメージも変化していることや、ブランドとしての鮮度が落ちてきた点を考慮して、「観光・レジャー色」が強かったブランドイメージから大きく方向転換をすることに決め、建物から設備、接客サービス、最終的には営業方針までを見直して、新しいホテルをいちから作る意識でコンセプトを考えていきました。

そして大きな方向性として「マリッサリトリート」をブランドコンセプトにして、3つのREをご用意しています。

・Respect for Nature ― 優美で雄大な自然に自分を見つめ
・Relax and Luxury ― 自然の中にとけこむ空間の居心地の良さ
・Reborn with Activity ― あなたがあなたであるために

建物や内装は地中海にあるリゾート地と似ている瀬戸内海の雰囲気を生かした「南欧風」の「上質で」「自然と調和したデザイン」を演出。さらにその雰囲気に合ったサービスや接客内容も大きく見直し再構築していくことが決まりました。

リニューアル後に想定している顧客層は、訪れるホテルに対し「何もしない贅沢な時間」や「癒やしの空間」を求めているお客様です。リブランディングにより、国内だけでなくインバウンドも含めた新しい顧客に満足していただける、付加価値の高いホテルにしたいと考えました。

ネーミングに込められたマーケティング戦略

ホテル名を「ホテル&リゾート サンシャイン・サザンセト」から「マリッサ リゾート サザンセト 周防大島」に変更すると同時に、ロゴマークやキャッチコピー、WEBサイトも刷新して新たなブランド展開をしています。

新しいホテル名の最初に掲げた「マリッサ」という印象的な言葉には、単にイメージや語呂から考えたネーミングではなく、リブランディングにおけるマーケティングと連動した重要な戦略があります。

「MARISA(マリッサ)」とは、英語、イタリア語、スペイン語などの女性名で、ラテン語で「海の」を意味するmaris(マリス)が語源になっています。

この愛らしい人名を「リゾート」の前につけることで、日々の生活の喧騒や疲れを当ホテルで癒やし、リフレッシュしてもらいたいという、とくに女性の方々へのメッセージを込めています。

またロゴマークは、人魚に見立てた女性と周防島の輪郭を柔らかな一筆書きでデザインして、「周防大島」と「マリッサ」の繋がりを大切にデザインしました。

このように今回のリブランディングにおいての顧客層は女性を中心に、その女性と共に過ごす男性や母親、ご友人同士のお客様も想定しています。

このような「何もしない贅沢を知っている」経験豊富なお客様に対して、いかにして「心を癒やす上質な休日」を提供できるかを考え、部屋や料理だけでなく接客やアメニティの一つ一つにまでこだわりながら準備を進めてきました。

新しいブランドビジネス戦略の中心となるのは「人」

ビジネス戦略も根本から見直しました。たとえば、ゆったりと寛げるプレミアムルーム(84㎡)は元々2部屋だった客室の壁をなくし1部屋へ、露天風呂付きの客室は4部屋から10部屋に増やすなど、「マリッサリトリート」のコンセプトに沿ったハード面のリニューアルを進めました。

部屋数を減らすことで受け入れる顧客数も減りますが、目指す「上質なおもてなし」をするためには従業員の数はそのまま維持する必要があると考えました。

そしてさまざまな角度から運営を検討した結果、思い切って部屋単価を上げる大きな決断をしました。

当然ながら宿泊その他サービスの値上げは、その価格に見合う施設や食事・体験などすべてのサービスの質を根本的に見直してそのレベルを上げなければなりません。

そこでホテルとして生まれ変わるための一番重要なポイントは建物や備品ではなくそこで働く「人」であると考え、「スタッフの意識改革」をリブランディングにおける大きな課題として取り組むことにしました。

スタッフの意識が変わりサービス品質が向上することは、今回のリニューアルが成功するかどうかの「鍵」となると考えました。

「パーソナルタッチのあるサービス」を提供するために進めたスタッフの意識改革

一人一人に合わせたサービスや温かみのあるふれあい、島で暮らすスタッフならではのホスピタリティマインドを大切に、私たちはゲストをウェルビーイングへと導きますと考えております。

一方スタッフの側から見ると、これまではハワイ色を全面に出した「アロハシャツ」を着用して、海水浴がメインの顧客に対してレジャーホテルに近いサービスを行っていたので、急に「パーソナルタッチのあるサービスに変えてください」と言われても、大きな戸惑いがあるのも当然のことだと思います。

そこで、新しいオペレーションのマニュアルの習得と並行して、スタッフの意識を内側から変えるために3つの施策を行いました。

1つ目は、初心に戻り「なぜ、この仕事に就いたのか」を問いかけることで、スタッフ全員でホテリエとしての自分を見つめ直したことです。

私も含めてホテリエを志した理由の多くは、「顧客としてホテルでの体験や思い出が原点」となっています。その原体験を思い出し再確認することで、お客様の思い出に残るサービスとは何かを考えました。

それは、著名な高級ホテルで提供される洗練されたサービスではなくても、この土地の方言で接客したとしてもお客様の思い出に残るのならば、それこそが私たちの目指す接客かも知れません。

このようにスタッフ毎の異なる個性やアプローチの方法も大切にしながら、接客サービスに対する共通認識を作ることを丁寧に進めました。

2つ目は、目標とする「パーソナルタッチのあるサービス」を、スタッフ自身が実際に体験する施策です。

ブランドコンセプトの「マリッサリトリート」を実現していくには、実際に自分たちが「パーソナルタッチのあるサービス」を体験することで、「お客様がお金払ってもいいと思えるサービスとは何か?」を考えることが重要だと考えたからです。

ユニフォーム制作は、リブランディング施策のなかで重要な位置づけ

そして3つ目は、オリジナルユニフォームの制作プロセスを通して行うブランディングです。これまでのイメージを一新し上質なリゾートを提供するためには、新調するユニフォームがとても重要な役割を持つと思いました。

お客様にもスタッフにもユニフォームのデザインを通じて目指すホテルの姿を伝えることで、新しいコミュニケーションやサービスを提供するために「背中を押しをしてくれる」のではないかと考えました。

そこで今までのように、カタログの中で予算との折り合いをつけながら選ぶ作業はやめ、今回は「ユニフォームがブランディング施策のなかで重要な意味を持つ」という認識で予算も確保したうえで、私たちのブランドを理解して相談に乗って制作してもらえる依頼先を探すことにしました。

その中で、シタテルの実績事例をみて、イメージに近いユニフォームがあったことや制作過程で色々と相談にのってもらえることを期待してシタテルに依頼を決めました。

コンセプトを体現しつつ、お客様とのコミュニケーションツールにもなる物語性のあるユニフォーム

シタテルには大きく3つの要望を伝えました。

まずアロハシャツが象徴していた以前のコンセプトを大きく変え、「瀬戸内の穏やかな自然に心と身体を癒す、美しく輝く上質な休日が過ごせるリゾート」=「マリッサリゾート」のオリジナリティーのあるデザインにしたいという点。

次に接客する際に、想いやホテルの考え方を顧客に伝えるための「物語性」をデザインに反映して、ユニフォームを会話のきっかけやコミュニケーションツールとして利用したいこと。

最後に、責任の所在と対応をお客様からみてわかりやすくするために、マネージメントスタッフの着用するユニフォームは、現場スタッフとは異なり役職者との区別があるデザインにしてほしい、という3つのリクエストをしました。

開襟シャツのフォルムは引き継ぎつつも、生地にジャガードを採用する大胆なデザイン提案

シタテルからのデザインと仕様の提案は、予想を超えたサプライズがあり「いい意味で裏切られた」と感じました。

夏用の上着は意外なことに、「オレンジがかったアースカラー」のリーフ模様が施されたシックで高級感のある「アロハシャツ」でした。

「ハワイ感」を変えたいという依頼が前提にあったので「アロハシャツ」をベースにした提案には驚きましたが、歴史的にも繋がりの深いハワイと周防大島の関係性を大切に残し、建物とマッチするだけでなく特産品のみかんを連想させる色合いや柄は、シルエット自体は以前と同じ開襟シャツにも関わらず、イメージがガラッと変わりとても素敵なデザインでした。

また、凸凹(おうとつ)の手触り感がある「ジャガード生地」の採用も、予想を超えた素晴らしい提案でした。

見た目に清涼感を感じさせる質感があり、洗濯してもシワになりにくく汗染みもできない素材は機能性までも考慮されており、その提案力はさすがアパレルのプロだと感じるものでした。

私たちの依頼を考慮して上質感をもっと全面に出したデザインも検討されたそうですが、あまりスタイリッシュになってしまっても、顧客の「開放感」を感じたいという気持ちにマッチしないのではないかと考え、シルエットはアロハシャツをそのまま残し、生地で「リゾート感」を演出するデザインにしたとの説明を受けました。

お客様目線にも配慮したバランス感覚も素晴らしい提案だと思いました。

制作プロセスへの参画が、ユニフォームへの愛着を生み、目指す接客サービスを後押し

シタテルからのいくつかの提案をもとに、実際に着用するスタッフと検討を重ね、最終的な形に仕上げていきました。

予算の関係上全てのアイテムをフルオーダーすることはできませんでしたが、スタッフ自身が自分たちの好みや仕事を見直しながら、ユニフォームに自分たちの要望を反映させていく作業は、今回のリブランディングに対する取り組みの中でも非常に重要なプロセスだったと思っています。

単にデザインの好みだけではなく、ユニフォームの機能を考える際に自分たちの仕事の見直しができたことは大きな意義があったと思います。

一例ですが、デザイン性を優先して「ペンを差すポケットをつけない判断」をした結果、「デザインを優先してよかった」と思えるおしゃれな仕上がりになっており、より身だしなみに気を使うことで、意識改革にもつなげることができたと思います。

またスタッフ一人ひとりがこのプロセスに参画することで、「自分たちが着たい服」になり、なによりもユニフォームに対する「誇り」や「愛着」が深まりました。それこそが既製品との一番大きな違いだと感じました。

今回、約半年に渡りリブランディングの重要な課題として取り組んできた「スタッフの意識改革」は、グランドオープンして、実際にお客様と触れ合う時からスタートすると思っています。

スタッフ全員で制作したこのユニフォームを着用することで、マリッサ流のおもてなしを目指した積極的なコミュニケーションや上質な接客へ、背中を押してくれることを願っています。

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