事例

中長期的な視点から「ブランドの本質」に取り組むホテルグランバッハ

株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント

株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント

https://www.ghm.co.jp/


1947年創業の食と健康の総合ホスピタリティ「株式会社グリーンハウス」100%出資の子会社として、同社のフードサービス業界の実績とノウハウを生かし「ホテルの受託運営」「ホテルに関するコンサルティング」「ホテルの開業支援」等を行う


ホテルグランバッハ熱海クレッシェンド

https://www.grandbach.co.jp/atami/


「バッハの音楽と静謐な環境が心身を癒す極上のオーベルジュ」をコンセプトにした、ホテルグランバッハの最上位ブランド。リブランディングに取り組んでおり、客室をはじめ、ロビー・デッキエリアといったパブリックエリアなど順次改装を進め2024年8月1日に全面リニューアルオープン

ホテルグランバッハ熱海クレッシェンド 総支配人 関根 隆清 様
株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント M&C(ブランディング担当)住永 留理子 様

目的

  • リブランディングのコンセプトに合ったオリジナリティがあるユニフォームを予算内で制作したい
  • スタッフがこのホテルで働く喜びを感じる、インナーブランディング施策になるユニフォーム制作がしたい

結果

  • ベースとなるデザインを「ホテルグランバッハ」ブランドへの思いとこだわりでカスタマイズすることで、オリジナリティ溢れるユニフォームを制作することができた
  • 制作のプロセスにおいて、スタッフに既存の制服の課題や運営する上での希望などをヒアリングをしながら現場の意見が反映されたユニフォームに仕上がった
  • 新しいユニフォームを着用することで自己表現の幅が広がり、スタッフのモチベーションが上がった

利用サービス

内装からユニフォームまで細部へのこだわりが、ブランドを軸にしたゲストとスタッフ間の好循環を生む

ホテル事業の中核を担う自社ブランド「ホテルグランバッハ」のリブランディング

株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント社は、全国に15ヶ所の宿泊施設を展開しています。

2014年に1号店を京都に開業し、熱海、仙台、銀座と現在4店舗で運営している自社ブランドの「ホテルグランバッハ」は、ホテル事業の中核を担うブランドに成長させるため、2年前から「ブランド認知を高める」という中長期的な課題に取り組みリブランディングを進めています。

リブランディングの第一歩として、ホテルの存在意義を明確にしてその「理念」を社員全員と共有するために「グランバッハブランドスピリット(行動指針)」をホテル毎に制作。スタッフで毎朝確認して、常に意識できるようにしています。

ブランドコンセプトは、グリーンハウスグループの企業理念である「食と健康産業」に基づき、「ウェルネスな食(※)」と「音楽」を掲げ、このコンセプトに沿って、パンフレットやマーケティングツール類、またギフトアイテムのロゴ表記からユニフォームまで、ブランドの「見え方」「見せ方」そして「トンマナ(tone & manners)」の再構築を進めてきました。

一例として、ホテルオリジナルのお土産「ヴィーガン(※)クッキー」の開発があります。

「食べること=うれしいこと」と思えるようにがコンセプトの東京・麻布台ヒルズにあるヴィーガンカフェ「エイタブリッシとのコラボレーションで実現した原料を厳選した「ウェルネス商品」となっており、パッケージデザインには、ホテルグランバッハのインスピレーションの源であるピアノや、J.S. バッハに纏わるモチーフが使われています。そのオリジナリティのあるデザインで、商品力の向上と同時にブランド強化の施策となっています。

※ウェルネス:「健康」を身体だけでなく心や社会といったより広範囲な視点から捉えたよりよく生きるためのライフスタイルを示す概念

※ヴィーガン:動物由来である食品を食べない完全菜食主義

様々な施策はお客様へのサービスであると同時に、スタッフがブランド理解を深めるためのインナーブランディング

ブランディング施策の一環として、「旅中を楽しんでいただくためのコンシェルジュサービス」を目的に「Tabi Life(アプリ)」を活用しています。

このアプリは、ご到着時にゲストの皆さまご自身のスマホでQRコードを読み込んでいただくことで、館内のご案内やイベント情報をリアルタイムでご覧いただけるだけでなく、お客様から総支配人へ直接メッセージが送れる機能もあるため、励ましのメッセージやネガティブな情報も全館で共有し、モチベーションアップや改善策につなげています。

また、当ホテルのコンセプトを「五感」で感じていただくため、チェックイン時には「ウェルカム・ミュージック」やホテルオリジナルの「香り」でお迎えしています。

ピアノの生演奏でお客様を迎える「ウェルカム・ミュージック」は、バッハの名を冠するホテルのコンセプトである「音楽」の象徴であり、私たちならではの「おもてなし」のひとつです。

さらに今回、ロビーの「香り」のキーノートにアカエゾマツのエッセンスを採用しました。

アカエゾマツはピアノの響板やヴァイオリンの素材に使われており、深い森に抱かれるような落ち着いた樹木の香りです。ホテルグランバッハ熱海クレッシェンドのコンセプトにマッチした「香り」を演出しています。

このように、ロビーを満たす「音楽」や「香り」は、ゲストとの会話の糸口になるだけでなく、ゲストを癒し、またスタッフの気持ちをも癒してくれるでしょう。またそんな香りの効果とともに「ブランド理解」や「このホテルで働く意味や喜びの再認識」につながる重要な施策であると考えています。

ユニフォームのリニューアルは重要なブランディング施策

ユニフォームもまた、ゲストの第一印象に大きく影響するとても重要なアイテムなので、リブランディングの一環として行なったリニューアルの際、オリジナリティにこだわりたいと考えていました。

そこで、ベースとなるデザインや生地の「素材」や「色」、また細部のディテールを変更でき、オリジナルのユニフォームに近づけることができるシタテルのカスタムオーダーを利用することにしました。

これにより、ホテルのコンセプトを表現しつつ、予算内でオリジナリティのあるユニフォームを制作することができたと思っています。

とくにこだわったのが「色」です。改装した部屋の「サンドカラー」と親和性の高い「明るいベージュ」をベースカラーにし、このホテルのキーカラーである「バロックオレンジ」を裏地や、ネクタイ、スカーフなどワンポイントに配置しました。

その他、シタテルからのアドバイスを参考にしながら制作したユニフォームは、以前の格式を重視した畏まったイメージから、少し遊び心を加えた「リゾート感」が表現された納得のいく仕上がりになりました。

ユニフォームの制作がインナーブランディング施策のひとつに

シタテルの最も良かったところは、制作前に「スタッフへ直接ヒアリング」を行い、現場の意見をユニフォームのデザインに反映していただいた点です。

動きやすさなど機能面への配慮はもちろん、スタッフのモチベーションがあがるデザイン提案がとくに素晴らしかったです。

新しいユニフォームを着用することで、このホテルで働く「喜び」や「誇り」を感じることができる「ユニフォームの理想的なあり方」を、私たちや現場のスタッフと一緒に考えてもらい具現化してもらうことができたと感じています。

シタテルのサポートによりユニフォームの制作プロセスが、私たちが重要視するインナーブランディング施策のひとつにすることができました。

ブランディングの本質は、細部を積み重ねた結果におきる「共感の連鎖」

ノーカラーデザインや淡い色合いのジャケットの採用は大きなチャレンジでしたが、「おしゃれ感」と「格式」のバランスが取れたよい選択だったと思います。

新しいユニフォームの運用で最も変化したのは、スタッフのモチベーションが上がり、「自分らしさ」を表現する意欲が増したことです。

以前はブラック基調のユニフォームに合わせて、カチッとした髪型だったスタッフが、リニューアル後はリゾート感のある髪型や眼鏡もカジュアルなデザインに変え、全く違った印象になりました。女性用のスカーフも、スタッフがその日の気分に合わせて付ける位置を変えたりしているのを見ると、「ブランドを愉しんでいるな」と嬉しくなります。

ブランディングは一朝一夕には確立しません。単にブランドのアイテムを身につける、といった表面的なことではなく、内面的なブランド理解が必要です。

長く続くブランドを確立するためには、施策やゲストとのコミュニケーションの意味を深く理解し、個々の考え方や振る舞いに反映させることが重要だと考えます。

お気に入りのユニフォームを着用しモチベーションが上がったスタッフが、素敵な香りと音楽にあふれる「ホテルグランバッハ」ならではの空間で、背景にある「物語」を披露する。そのスタッフの充実感が、ゲストと質の高いコミュニケーションを生み、またゲストも幸せな気持ちになっていただける。

そのような「共感の連鎖」こそがブランドの本質と考えており、「ホテルグランバッハ」で確立したいと考えています。

外資系ホテルの「ブランド優先カルチャー」を礎に「ホテルグランバッハ」独自のブランディングを確立

ホテルグランバッハ熱海クレッシェンド 総支配人 関根 隆清 様

私は外資系ホテルで20年以上のキャリアを積んだ後、今回初めて日本企業が運営する熱海のホテルの責任者となりました。

外資と日本企業のホテルマンにはブランドに対する認識など、コーポレートカルチャーの違いがあります。

どちらにも一長一短がありますが、「自分たちがどのようなホテルマンになり、どのようなホテルを目指すのか」の軸をぶらさずに、「ホテルグランバッハ」ならではのおもてなしの在り方を探っていきたいと考えています。

ユニフォームがスタッフのモチベーション維持に果たす役割

私が考える今回のユニフォームリニューアルは、「ゲストが洗練されていると感じる」ことも重要ですが、それ以上に「スタッフの気持ちの切り替えやモチベーションを高めるため」の施策であるべきだということです。

私自身、制服に着替えたときに気持ちが切り替わる瞬間を経験しました。疲れていても、制服に着替えてネクタイを締めると気持ちが引き締まります。仕事が終わった後、ネクタイを緩めることで気持ちをプライベートに切り替えることもできます。

このオンとオフの切り替えや、スタッフのモチベーションを高めるためにユニフォームは重要なツールとなっていると思っています。

「お客様」「スタッフ」に現場職の一人として向き合うことが仕事

私は当ホテルの責任者という立場ですが、現場で人と向き合うことが重要な仕事だと考えています。

お客様との会話はもちろん大事ですが、スタッフとのコミュニケーションに多くの時間を使いたいと思っています。そしてスタッフが気持ちよく働き、お客様の喜びのために働く意味や意義を感じられる職場作りに尽力したいと考えています。

  • Twitterアイコン
  • Facebookアイコン
事例TOPに戻る