ユニフォームのリニューアルにより、スタッフのモチベーションが上がり映画館の接客品質が向上
株式会社東急レクリエーション
映画興行や不動産業を手がける東急グループの企業。「ワクワクする体験を、ドキドキする感動を、共に創り出そう!」を企業ビジョンに掲げ、全国展開のシネマコンプレックス「109シネマズ」を運営。また、ボウリング場・フィットネスクラブ・スポーツコート施設・ホテル等を多様な事業を展開している。
109シネマズ
「エンターテイメントを通して、心豊かで活力ある社会づくりに貢献する」という経営理念のもと、映画館ならではの鑑賞体験を追求。
公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会から発表された 2024 年度 JCSI(日本版顧客満足度指数)調査の第4回調査において、2年連続4回目となる映画館業種部門第1位を獲得。映画館業種部門の調査の中で、1位を獲得した回数は、109シネマズが最多となる。
目的
- 従来のユニフォームの課題や問題点を修正したユニフォームを制作したい
- 新しいデザインで、競合との差別化を図りたい
結果
- アンケートに基づいた従来のユニフォームの課題が解決できた
- ユニフォームのリニューアルにより着用するスタッフのモチベーションが上がり、接客品質の向上につながった
利用サービス
スタッフの映画愛を刺激し、ユニフォームに愛着を持ってもらうためのギミック満載のデザイン
新しい価値を提供する映画館づくりを目指す老舗企業
当社は1946年6月に映画興行を中心とする新日本興業株式会社として設立し歴史をスタートさせました。 現在では全国で映画館を運営しています。
また、映像事業にとどまらず、スポーツレジャー施設やホテル経営を含む「ライフ・デザイン事業」、不動産事業にも注力。さらに、2023年4月には新宿TOKYU MILANO跡地を再開発し「東急歌舞伎町タワー」をオープンするなど、時代を見据えた「事業創造」にも取り組んでいます。
会社として取り組む大規模プロジェクトの一つに東急歌舞伎町タワーに誕生した新ブランド「109シネマズプレミアム新宿」があります。
全席にプレミアムシートを導入するなど、業界内でも挑戦的な取り組みを展開しています。
私の業務は、主に会員施策の企画や、お客様が快適に過ごせる環境作りをスタッフと共に進めることです。ご来場いただくお客様には、必ず満足いただける体験を提供できる劇場を目指しています。
ネット配信時代における映画館の存在意義とスタッフの役割
現在、ネット配信が主流となる中で、お客様が映画館に足を運ぶことには、「特別な体験」としての付加価値が求められています。
その付加価値を提供するためには、大きなスクリーンや高品質な音響といった設備面だけでなく、清潔でリラックスできる館内環境や快適で鑑賞しやすい座席といったハードウェアの充実が重要です。同時に、「接客」というソフト面のクオリティも欠かせません。
映画館では、「チケット購入」や「上映ホールへの案内」だけでなく、待ち時間や鑑賞後に「飲み物やフードを購入する」「グッズを選ぶ」など、スタッフと接する場面が数多くあります。そのため、館内での接客サービスの質を高めることが、お客様に特別な体験を提供する上で、非常に重要な役割を果たすと考えています。
接客の品質向上のためにはスタッフのモチベーションアップが不可欠
「挨拶」「案内」「販売業務」「清掃」など、スタッフがお客様と接する場面でのサービスクオリティを向上させるには、待遇や教育といった条件面だけでなく、スタッフのモチベーションが重要な鍵を握ります。
例えば、キャンペーン中の映画の集客を促進するために、各劇場でアルバイトスタッフが中心となり、工夫を凝らした館内ディスプレイを制作する施策を実施することもあります。
これにより、スタッフが現場で映画館運営に貢献していることを実感できる環境づくりに努めています。
また、ポップコーンなどのフード販売や館内清掃は、お客様が快適に映画を楽しむために欠かせない重要な業務です。
この点を社員だけでなく、アルバイトを含むすべてのスタッフに共有し、「現場のひとつひとつの業務が映画館を支えている」という誇りを持ってもらうことが、私の重要な役割の一つだと考えています。
ユニフォームのリニューアルに向けた方向性の決定
ユニフォームのリニューアルにあたっては、競合他社を研究しつつ、「どのようなユニフォームを作りたいのか」、さらに「109シネマズはどのような劇場でありたいのか」というブランドの根幹となる問いを明確にすることからプロジェクトをスタートしました。
デザイン提案を受ける前に、まずは社内で、現行のユニフォームに関するアンケートをWEBで実施しました。
この調査は全国の109シネマズで働く約1,200人のスタッフ(アルバイト含む)を対象に行い、現行ユニフォームの課題やリニューアルに対する要望を収集しました。
アンケート結果からは、「洗濯後の乾きにくさ」や「丈が短く商品の入れ替え作業時に不格好に見える」といった現場の声が多く寄せられ、具体的な改善点が浮き彫りになりました。
同時に、最前線で働くスタッフが快適に着用できるユニフォームの重要性を再認識するきっかけになったと思います。次に、「どのような劇場でありたいか」というブランドのビジョンを基に、新しいユニフォームのデザインを検討しました。
トレンドを意識し、「オーバーサイズ」「ユニセックス」「体型を問わず着やすい」などの方向性を明確化。従来のポロシャツは男女で異なるシルエットを採用していましたが、ジェンダーレスの視点から、すべてのスタッフが同一デザインを着用する形式を採用することにしました。
4社コンペの中で「要件定義」を覆したシタテルの提案
制作パートナーの選定にあたり、社内アンケート結果や劇場の方向性に基づいたいくつかの要件を提示し、4社から提案を受けました。
特にデザインについては、長時間の検討を経て、リニューアルするユニフォームは従来の「ポロシャツ」ではなく、襟のないスタンドカラーシャツをベースとしたユニセックスデザインを求める方向で提案を依頼しました各社のプレゼンテーションは、事前にデータを提出してもらい、その後説明を受ける形式で進行しました。
しかし、シタテルから提出されたデータを見た瞬間、大変驚かされました。シタテルの提案は、要件定義として明確にリクエストした「ポロシャツではない」という条件を完全に覆す、「ポロシャツのデザイン提案」だったのです。
シタテル案を採用した理由
シタテルの提案は、こちらの要件定義を「敢えて」無視しつつも、私たちの考えや想いを深く理解した上で「ポロシャツ」という結論にたどり着いたことが反映されていました。
詳しく説明を聞くと、インパクトを狙っただけの提案ではなく、熟考の末に導き出されたデザインであることがよく伝わり、納得することができました。
特に印象的だったのは、ユニフォームを単なる「制服」としてではなく、「ブランディングの重要なツール」として捉えていた点です。
この視点は他社にはなく、新鮮で説得力がありました。
私たちが最も共感したのは、企業理念を体現するデザインの仕掛けです。
従来より、109シネマズの経営理念を反映させた「We Smile, For Smile」というスローガンを、アルバイトスタッフを含めた全員に浸透させたいという課題がありましたが、シタテルはそのスローガンを襟下の内側にプリントするという斬新なアイデアを提示しました。
外からは見えませんが、着用時に少し見えることで、スタッフが理念を意識し、仕事へのスイッチを入れる効果が期待できると感じました。
提案されたポロシャツは、従来のイメージを一新したスタイリッシュでスマートなデザインでした。オリジナルで制作されたエプロンとも相性が抜群で、全体の調和も見事でした。
さらに、特注のチャコールグレー色を採用するなど、質感や色合いにも徹底したこだわりが感じられました。
「トレンドのデザインを取り入れたポロシャツ」によって競合との差別化を図るという提言も、アパレル業の専門的な知見が感じられ非常に説得力のあるものでした。
ポケットに隠されたスタッフの「映画愛」に寄り添うデザイン
シタテルが提案したユニフォームには、他にもさまざまな工夫が施されていました。
胸ポケットの横に広がるデザインは、映画スクリーンのアスペクト比(縦横の比率)をモチーフにしています。また、ポケットの蓋や反対側のストラップホルダーも、ワイドスクリーンの比率を取り入れた横長の形状で設計されています。
映画業界で働いている私自身も、「私たちの『映画愛』を理解してくれている」と思わず感動するような仕掛けでした。こうしたユーモアとセンスにあふれたデザイン意図は、お客様には公表せず、スタッフ内だけで共有されています。
これらの工夫の数々は、シタテルの協力で制作された「アピアランスルールブック」を通じて、ユニフォームの着こなしやデザインの意図と共にスタッフに伝えられています。特に映画好きのアルバイトスタッフに、ユニフォームへの愛着を感じながら着用できるよう、細やかな想いが込められた施策の一つです。
ユニフォーム制作会社を超えたシタテルのサポート
シタテルをユニフォーム制作のパートナーに決定してから約6ヶ月間、細かな調整を重ねながらブラッシュアップを行い、ファーストサンプルから量産まで順調に進めることができました。
その過程でシタテルは、ユニフォーム制作業務にとどまらず、アパレルの専門家として弊社のブランディングを包括的にサポートしてくれました。
また、ユニフォームリニューアルに関連して制作した「アピアランスルールブック」では、単なる着こなしの提案にとどまらず、その背後にある私たちの意図を的確に言語化していただきました。
具体的には、着こなしに個性を反映させる方法や、ただルールを守らせるためではなく、共に働く仲間やご来場されるお客様に加えて、スタッフ自身が自分らしく働くためのルールであることを理解してもらう表現をサポートしてもらいました。
ユニフォームリニューアルをきっかけにしたインナーブランディング施策が、現場スタッフのモチベーションアップにつながった
ユニフォームをリニューアルしてから約6ヶ月(2024年11月現在)が経過しましたが、現場スタッフからの評判は非常に良好です。
「おしゃれになり、働くのが楽しくなった」「洗濯後すぐ乾くので便利になった」といったポジティブな声が多く寄せられています。
今回のユニフォーム制作を通じて、シタテルのおかげで多くの学びと気づきを得ることができました。
リニューアルの検討や制作プロセス、そして着用後の反響を通じて、新しいユニフォームは経営と現場をつなぐ重要なツールとなったと実感しています。
デザインの変更にとどまらず、インナーブランディング施策としても機能していることに大きな満足感を得ています。